1人が本棚に入れています
本棚に追加
オレがア然としていると
「ホーラ、早く顔を洗って、ゴハン食べなさい」
と、しかめっ面をした。
オレはその雰囲気に押され、訳も判らず
「あ?ああ…」
と返事し洗面所へ向かうと、そこにいたのはオレの父親だった。
「オウ、裕一、オトーサン、今、終わったから、次、いいぞ」
父は狭い廊下のオレの脇を通り、リビングへ消えて行った。
若い。母同様、父も若かった。
やはり見た感じ、40代だろうか。
何故だ。
髪の毛もフサフサじゃないか。
「7割ハゲ」だったハズだが…。
と、トイレから、これまた若い女性が登場。
「え?ネ、ネーチャンか」
それは、3つ上の姉であった。
38歳、結婚しており、小学生の男の子も1人いる。
しかし、目の前に現れた姉は、どう見ても高校生である。
現にガッコの制服を着ているし。
「何ジロジロ見てんのよ。気持ち悪い」
姉は眉間にシワを寄せ、ぶっきらぼうにそう言うと
「行ってきま〜す」
と、玄関から出て行った。
今だに何がなんだか判らないが、とりあえず、歯を磨こうと、洗面台の前に立った。
鏡を見るのが怖かった。
オレは一体、どう、映るのか。
そ〜っと、顔を上げ、鏡に目をやる。
そこにいるのはオレでは無かった。
正確には、今、35のオレではない。
目の前に居るのは14、5の頃の、あどけないオレ、笠井裕一であった。
「なんで〜?」
悲惨な声がオレの口から漏れた。
体は熱を発し、顔面の血の気が引いて来た。
なんか、めまいもして来た。
最初のコメントを投稿しよう!