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家族皆若いし、オレも若い。 と、壁に吊るしてあるカレンダーに目をむける。 1999年、平成11年6月11日金曜日…… 「えーっ!」 何故20年前のカレンダーが吊るしてあるのだ。 今は2019年令和元年である。 平成から1ヶ月前に令和に変わった年なのだ。 「ゴハン出来たよ〜」 若い母が呼んだ。 とにかく言われた通り、歯を磨き顔を洗うと、リビングに戻り、昔座っていた定位置の椅子に腰かけた。 目の前には、味噌汁、ゴハン、目玉焼き、納豆が並べられていた。 学生時代の時のワンパターン朝食であった。 「いただきます…」 戸惑いで気持ちが落ち着かず、食う気などなかったが、とりあえず口をつけねばと箸を持った時、隣の和室から、また1人、オレの前に現れた。 「裕一、おはようさん」 と、オレに声をかけた人物。それはオレのばあちゃんであった。 「えー!マ、マジで?ばあちゃんか」 驚き、声をあげた。 「もう〜、どうしたのよ〜」 と、母。 「何言ってんだよオマエ。今日、オカシイぞ」 父も眉を寄せ、オレを睨む。 ばあちゃんは何も言わずに、ニコニコしながら 「よっこいしょ」 と、オレの横の椅子に腰かけた。 このばあちゃん、父の母親は5年前に心臓の病気で亡くなっていた。 そのばあちゃんが今、オレの隣にいる。 生きているのだ。 オレは身震いした。 ばあちゃんの様子をソロソロ横目で見ていると、やはり若干だが若く見える。 5年前で88だったと思う。 今居るばあちゃんは見た目、70くらいだろう。
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