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ただ、ウチの庭に立っていたサルスベリの木だが、確か何年か前に、伸び過ぎてウザいとか父が言いながら、切っちゃったのだか、それは残っていた。 また、数百メートル離れたトコに建っていたアパートはなく、まだ更地であった。 オレは当時、3年間通った道を歩いて、今はもう母校である、S北中学校へ向かった。 学校近くになると、登校する生徒達も増えてきた。 全く見知らぬヤツ。なーんとなく見覚えのあるヤツ。 だが今の所、ハッキリと誰々と判る生徒はいなかった。 門から入ると、ためらうことなく校舎1階の靴箱に行き、左から3列目の上から4段目に靴を入れ、そこにある上履きをとった。 何故か靴箱の自分の場所は頭に残っていた。 オレは、3年2組。 そこの階段を上がって、すぐ教室である。 これも躊躇が無かった。 35のオレの中に、その辺の15の頃の記憶が残っているのだろうか。 教室には30数人の生徒がいて、ザワザワしていた。 もうほとんど来ているみたいだ。 オレのこの時の席は、1番窓側の列の前から3番目。 これもオレの頭の中にあった。 席に座り辺りを見回す。 確かに皆面識はある。クラスメイトだから当たり前であるが、しかしもう名前まで覚えてないヤツも結構いた。 懐かしさよりも、まだ戸惑いの方が勝っていた。と、 「裕一〜」 声をかけられた。 それは学生時代、1番仲の良かった、本間大志というヤツであった。 流石にコイツは懐かしいと感じた。 高校も同じで、卒業後もたまにツルんでいたが、もう、7、8年会っていない。 彼は27くらいで結婚しており、披露宴にも、お呼ばれしていて、それが会ったのが最後である。
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