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「へぇ、妹尾と伊南沙が一緒か」
救世主現る。副会長様さま、バスケ部の先輩。
「宇部先輩、知り合いなんすか?」
「知り合いも何も、妹尾は2年の生徒会副会長だぞ」
「じゃあ、先輩と同じくらい偉い人……」
「あと、モデルやってて、ドラマとかにも役者で出てる」
「芸能人じゃないっすか!!」
お前はもうちょっとバスケ以外にも興味持て。と、先輩に頭を鷲掴みにされる。痛いです。
そんな事も気にならないくらい動揺してる。
有名人で、しかも生徒会副会長と見回りだって? そんなの無理無理。サボれないじゃん!!
「よろしくな妹尾。コイツ興味ないとすーーぐサボろうとするから。困ったら俺に連絡ちょうだい。コイツの姉貴に通報する」
「姉貴はダメです!! ちゃんと仕事しますって!!」「はい。了解です」
「先輩!! 了解しなくていいですから!!」
笑ってるから冗談だろうけど!! てか冗談であってくれ!! 姉貴に連絡は笑えない!! オレの楽しい文化祭が……!!
「てかやればわかると思うけど、多分伊南沙が仕事をせざるをえない状況になると思う」
「え?」
「あはは……」
え。妹尾先輩愛想笑いで何か誤魔化しました? ねえ。
「やってみてのお楽しみってやつだな」
「えぇ〜。今教えてくださいよ」
「そう言わずに、すぐわかるから。……っと、時間になるから持ち場に行った行った」
「ちょっと教えてくださいよぉ〜」
ぐいぐいと宇部先輩に押し出されて廊下に出た。隣には妹尾先輩が付いてきてくれている。
「……」
「……」
お互い無言で昇降口に向かって歩く。
え、何か話した方がいい? 有名人って何に興味あんの? オレ、バスケとスマホのパズルゲームの話しかできないんですけど、それでもいいのか? 芸能人ってゲームとかすんの?
「……妹尾先輩のクラスって、何やってるんですか?」
なんかもっと他にあったろ!! めちゃくちゃ無難な質問してんじゃねーか!!
「クラスの出し物?」
「はい」
芸能科の出し物って、イメージわかないんだよな。普通科と同じで、ゲームとか飲食系やってんのかな?
「展示」
「展示……」
やべ。オウム返ししちゃった。
展示ってなんだ?
文化祭のパンフレット見ればわかるんだろうけど、もらってすぐにかばんにしまったまんまだ。ページをめくってもいない。
「おれ1組なんだけど、隣の2組と合同で架空の商品とか企業のCM作って、それをクラスで流してる」
「すげぇ!! 有名人っぽい!!」
「芸能科ですから」
そんな面白い展示してんだ!! え、午後見に行こ!!
「姉ヶ崎くんのクラスは何やってるの?」
「屋台ゲームやってます。ゲームやってもらって、その得点で貰える景品が変わるんです」
「へぇ〜。面白そうだね」
「見回りがてら覗いてってください」
「あ〜……。うん。行ければね」
あれ。反応があんまり良くなさそうだな。
馴れ馴れしかったか?
昇降口に着いた頃、丁度9時になって文化祭がスタートした。
オレ達最初の仕事は、昇降口から流れ込んでくるお客さんの案内だ。
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