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「風あてるともっと涼しいっすよ」
「うっっっわっっ!! ちょ、姉ヶ崎、ストップ!! ストップ!! 襟であおぐなぁぁっ!!」
「あはははは」
先輩から敬語が抜けるくらいテンパってるのが面白くて、逃げられてもついつい追いかける。先輩でも、意外と素はこんなんなのかも。
『♪〜♪〜♪〜』
「ん?」
「姉ヶ崎くんのスマホじゃない?」
確かに、オレのケツポケットから音がするし、スマホが振動してる感じがする。
スマホの画面を確認すると、宇部先輩からの電話だ。
…………。
「あっ!!!!!!」
「…………何で、汗だくなんだ?」
「ちょっとはしゃぎすぎました……」
「ハァ……。ハァ……。ハァ……。す、すみませ、ん……」
渡り廊下から引き継ぎ場所の3階空き教室までダッシュを決めれば、そりゃ汗もかきますよ!! 制汗剤使っても、本当に体が冷える訳じゃないんだから!!
……なんて、先輩に向かって言える訳もなく。しかも、オレ達が遊んで引き継ぎを忘れた事が悪いんだから、自分達のせいですね。
「遅れてすみませんでした……」
「いいっていいって。俺らもサボれた訳だし。なぁ?」
「人混み嫌いだから、まぁ……」
宇部先輩が一緒に回る先輩に話を振ると、その先輩も特に気にしてないようで安心した。
マジ、宇部先輩達でよかった……。
腕章を腕から外し、宇部先輩に渡して見回り終了。やっと終わった!!
「腕章、お、お願いします」
「妹尾、いつまで息切れしてんだよ。もうちょい体力つければ?」
「体力馬鹿の宇部と一緒にしないで」
「えぇ?」
いまだに息切れをしている妹尾先輩と、それをからかう宇部先輩。もう1人の先輩は妹尾先輩側らしい。
「別に普通だよなぁ? 伊南沙」
「はい。別に本気じゃなかったっすもん」
3階までの階段ダッシュ。ましてや客がそれなりにいる階段じゃ本気では走れないから、流したし……。普通でも息切れまではしないんじゃないか?
「えぇっ!? アレで本気じゃなかったの!?」
「部活でやってるのに比べれば全然ですね」
「しんっっっっっじらんない……」
妹尾先輩、この世の物とは思えない顔で見てくるじゃん……。普通ですって……。
「少しここで休んでから遊びに行った方がいいんじゃない? 行こう、宇部」
「アイス忘れんなよー」
宇部先輩達はそう言うと、空き教室を出て行った。
空き教室は関係者以外立ち入り禁止だから、妹尾先輩はファンを気にする事なくゆっくりできる。まぁ、オレ達でも長居しすぎると先生に怒られるから、その内出ないといけないけど。
妹尾先輩の息が整うまでもう少しかかりそうだ。
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