10人が本棚に入れています
本棚に追加
「今入れますか?」
「えっ、ちょっと!?」
「空いてますよ〜」
入り口近くに立っていた、顔に血のりをつけた先輩に聞くとドアを開けてくれた。
ふっふっふ。これで先輩はもう逃げられない!!
「ようこそ廃学校へ。ここでは夜な夜な悪霊がイタズラをしかけています。このお札をこの教室奥の祠に置いて、悪霊をこの教室から出ないようにしてください」
「はーい」
「……」
「先輩、札持ちます?」
「いい」
「即答すぎますって」
説明をする幽霊の格好をした先輩から札を受け取って、怪しい雰囲気の教室内部へと進んでいく。
妹尾先輩も一応ちゃんとついてきてくれているみたいで、背中のワイシャツを摘まれているのがわかる。この教室に入ってからは一言も喋ってないあたり、先輩の中でこのお化け屋敷は本格的な部類になるんだろうな。
中は迷路みたいになっていて、細い道が分かれていたり行き止まりだったり。中々札を置く祠が見つからない。光も、教室のカーテンから漏れてる外の光が少しあるだけでまあまあ暗い。
『ガサッ』
「ヒッ」
『どこ……。どこにあるの……』
「っ〜〜」
雰囲気を出すための音とか、幽霊っぽい声とかが聞こえてくる度に、妹尾先輩が小さい悲鳴と一緒にシャツを引っ張ってくる。オレはそっちに驚くんだよな……。あと首締まりそう。
迷路の壁にはうっすら手形が見えたり、突き当たりに壊れそうな机と椅子が置いてあったり、結構凝ってるな……。
「あっ」
「えっ、な、何……」
「祠ありましたよ」
オレの声に驚いた先輩に笑いそうになったのを堪えて、祠を指す。
「早く置いて出よう」
「そうですね」
と言いつつ祠までの短い距離をゆっくり歩く。
先輩も途中までゆっくりついてきたけど、オレがわざとゆっくり歩いてる事に気がついてからはぐいぐいと強めに押してきた。
おもしろい。早く出たいんだろうな。
「姉ヶ崎くんっっっ!!」
「そんなに押さなくてもすぐ置きますって」
必死な先輩に笑いが堪えきれない。顔に出てるけど、先輩は気がついてないのか必死すぎて指摘できないのか分からないけど、言ってこない。
さすがにこれ以上からかったら可哀想だよな。普通に置いて出ようか……。
「いいなぁ……」
「!」
祠の横の壁から声がした。同時に、背中の妹尾先輩の手に力がこもる。最後の仕掛けか?
「俺も彼女ほしいなぁぁぁぁぁ〜〜〜っっ!!!!」
「うおっ」
「っっ──────!!!!!!」
壁だと思ってたのは布だけになっているらしく、そこから薄汚れたサッカーユニフォームを着た先輩が飛び出してきた。
わぁ、驚いた。
オレ以上に驚いて怖がってるのが先輩で、叫びこそしなかったけど、オレの背中に顔をべったり張り付けている。これはオレを盾にしておばけ役の先輩との距離を取ってるな。
おばけ役の先輩の前で札を置いて、出口がありそうな方向に進む事にした。
祠から出口までは1本道で、すぐ出口と書かれた場所が見えた。
「先輩、出口すぐそこなんで離れてください?」
「ほんと……?」
「ほんとで、いてっ」
何か頭に当たっ……。
「っわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
最初のコメントを投稿しよう!