Boy Meets Boy

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 文化祭。通称、"風鈴祭(ふうりんさい)"は、毎年9月の第1土曜と日曜に開催される。  一般公開もされるし、中学生向けの学校説明会も兼ねているから、かなりの一般客が来校する。そして、うちの学校には"芸能科"があって、それもかなりの一般客が来校してくる理由の1つ。  要は、ワンチャン有名人に会えるかも。だ。  話によると、現役アイドルとか超有名俳優がいるらしい。興味ないから知らないけど。 「えー、朝からお集まりいただきありがとうございます。あと30分ほどで風鈴祭が始まりますが──」  校舎4階にある視聴覚室。教室の前には生徒会役員の生徒がいて、向かい合わせでオレ達数人の一般生徒がいる。  バスケ部の先輩は生徒会副会長なので、もちろん前に立っている。行動見られてるから、フリでもちゃんと聞いておかないと後で怒られるんだよな。 「男女バスケ部、男子バレー部、女子剣道部、サッカー部は、ご協力ありがとうございます」  この5つの部活は強豪として全国的に有名。夏休み中はほとんど毎日練習をしてるか大会で、文化祭の準備には参加できていなかった。  だから、各部から当日の手伝いとして数人を生徒会に差し出して、準備に参加しましたよ。って形にしてるらしい。  働かざるもの食うべからず。的な。働かざるもの楽しむべからず。的な。 「──それでは、見回りの方よろしくお願いします。安全に、楽しく風鈴祭を楽しみましょう!!」  女の生徒会長が集会を締めくくって、各々視聴覚室を出て行く。  オレも先輩がこっちに戻ってきたら移動しよう。  さっき生徒会の人に、水色の腕章を渡された。  オレはこれを着けて見回りをする。時間になったら、次の担当者にこの腕章を渡して、見回り終了だ。  男子バスケ部の…というかオレの担当は、風鈴祭1日目午前中の校舎内の見回り。バスケ部じゃない、他の生徒と2人で何か事件や事故、トラブルが起きてないかを見て回る。  こんな事になったのは、あの時オレがじゃんけんでグーなんか出したからだ。あの時チョキを出してればこんな面倒事やらなくて済んだのに……!! 「えーっと、姉ヶ崎(あねがさき) 伊南沙くん? だよね?」 「はいそう、で……、す」 「背高いね」  後ろから声をかけられて振り向けば、見た事のない、顔の整った人が立っていて、言葉が喉につっかえた。  肌は白いし、目は大きいし、首は細いし、何か優しそうな雰囲気で、ニコニコしてる。何ていうか、こう、全体的に整ってるっていうか、バランスが取れてるっていうか、ブサイクではない。普通でもない。だったら、多分、イケメン。  姉貴とかクラスメイトから、誰がイケメンだのカッコいいだの、画像を見せられてもいまいちピンとこなかったけど、こういう人の事をイケメンって言うのか。なるほど、初めてわかった気がする。  身長は確かに高い方だと思うけど、多分オレの方が大きい。よかった。これで身長まで高かったら、オレは仲良くできなかったかもしれない。 「今日はよろしくね」 「はい、よろしくお願いします……」  困った。この先輩の名前がわからない。てか何でこの先輩はオレの名前知ってたんだ?  
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