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「そういうんじゃなくて?」
「もしびっくりした場合、姉ヶ崎くんに情けない姿を見られるのはちょっと……」
「あ、そっちですか」
別に情けない姿見てもなんとも思いませんて……。てか、驚かせるのがお化け屋敷側の目的なんだから、驚いてなんぼですよ。オレは驚きませんけど。
「姉ヶ崎くんこそ、誰かと回る約束してないの?」
「今日の午後は誰とも。明日は午前クラスの店番やって、午後バスケ部の同級生と回る約束してます」
「そうなんだ」
「先輩は? 彼女と回ったりとかしないんですか?」
「俺は明日1日クラスメイトと回る約束してる。今日の午後は姉ヶ崎くんと同じで空いてるんだ」
「デートですか」
「男友達だよ」
あー、ムズムズする。姉ヶ崎くんて呼ばれるの慣れてなくてムズムズする……。
「何。そんな俺にデートしてほしいの?」
「いや、姉貴は彼氏とデートするって言ってるし、他の先輩も何人か彼女と回るって言ってるんで、モテる妹尾先輩だったら彼女いそうだなーって」
さっきの普通科棟でも、男女2人で回ってるペア結構いたし。
付き合ってたら、一緒に回りたいもんなんじゃないのかなーって。
「彼女いないよ」
「ほんとですかぁ〜?」
「ほんとほんと。いても、文化祭だと目立つから一緒には回れないだろうし、事務所から恋愛は慎重に。って言われてるしね」
「わぁ、業界人だ」
よく聞くやつだ。アイドルの恋愛禁止とかのアレ。
「姉ヶ崎くんは? いないの?」
「オレはバスケが恋人です」
「熱烈だね」
「ネタですよ!! 本気にしないでくださいね!?」
「え、そうなの?」
逆に本気にされたのが初めてですっ!!
「そうですっ!! オレだって普通に彼女ほしいですよ!!」
「じゃあ、今はいないと」
「はい……」
今まで何人かと付き合った事はあるけど、バスケ優先してたら『別れよう』って言ってくる。
告白してきたのそっちじゃんか……。
後は噂話とか、話に尾ひれつきまくって面倒くさいから、もう彼女いらない。ってなったんだよな……。
「……思い出すのも嫌だった? なんか、ごめんね?」
「いえ、別に……。彼女、ほしくないです。いらないです」
「急にどんな心境の変化が?」
「面倒くさいな。って、思い出しました……」
「そっか……。大丈夫。俺も彼女いないから、俺とおそろいだよ?」
「先輩のいないと、オレのいないは、全然違いますから」
先輩のいない。は、事務所が慎重に。って言ってるからっていう理由があるけど、オレのいない。は、普通に相手がいないだけなんですよ。
先輩にはもしかしたら相手がいるかもしれないじゃないですかぁ……。それこそ、モデルとか俳優やってなかったら彼女がいる可能性が高いじゃないですかぁ……。
「先輩はイケメンだから、作ろうと思えばすぐ彼女できそう」
「作ろうと思って作るものでもないけどね」
まあ、確かに。
「姉ヶ崎くんがよければ、午後普通科棟案内してよ」
「えぇっ? 本当に一緒にまわってくれるんですか!?」
「アイスのトッピング券もあるしさ」
ね?
と笑う先輩の顔は、やっぱりイケメンだ。
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