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そんな暑いか……?
ともあれ、出てきた一般客を誘導しないといけない。
コンサートの感想とか喋りながら出てきてる人が多いのか、結構ザワザワしてる。まあまあ声張り上げないとダメかもしれないな。
オレは渡り廊下から部室棟に続く道に。妹尾先輩は外に降りられる道にそれぞれ立って、客が間違えた道を使う事なく校舎内に進むように見張る。
「校舎に入るにはまっすぐ進んでくださーい。こちらの道は部室棟に繋がる道ですので通行できませーん」
部室棟には一般人立ち入り禁止だから。と、昨日宇部先輩から教えてもらった。
だから、ちょっと失礼。と声をかけてきた、ウチの学校の制服を着た生徒だけは塞いでいる道を通す。多分部室に忘れ物でもしたんだろうな。
「転倒しないよう、ゆっくりお進みくださーい」
オレの丁度真向かいに立つ妹尾先輩も、少し声を張って誘導している。
それにしても人が多い。真向かいの先輩がハッキリ見えなくなるほどの、人、人、人……。
流れのスタート地点、体育館の扉を見ると、まだまだ人が出てきている。どんだけの人数が体育館にいたんだよ!! 確かにウチの体育館は大きいけども!!
まだまだ、どんどん、体育館から人が吐き出されてくる。まーーーじでいつまで人案内すればいいんだよ……。
あれっ? 人の流れが止まった?
扉の影にまだ客は見えるから、まだ中に人はいるはずだ。なのに、何で前に進んで行かないんだ?
「わぁ! 嵐くんだ!!」
「イケメンですね!!」
「ここの学校だったんですか!?」
「せ、せせの、あ、っ……、本物!?」
「あのっ!! 俺達ここが第1志望なんすけど!!」
…………妹尾嵐ファン再び、か。
また妹尾先輩がファンに囲まれている。朝みたいに人だかりができていて、そこで人の流れが止まっていると。
普通に邪魔だな!?!?
「ゆっくり前に進んでくださーい!!」
さっきより声を張って誘導してみる。多少前に進む人はいるけど、妹尾先輩の周りの人達は足が止まったままだ。
そこの人だかり!! 進めって、あんた達の事言ってんだよ!!
「他の方の迷惑になりますのでー!! ゆっくり前に進んでくださーーーいっっ!!」
前に!! 進めよ!! 後ろ詰まってんだよ!!!!
人だかりの隙間から見える妹尾先輩の顔は困ってるし!! どうにか進んでもらおうとしてるジェスチャーも見える。
いやもうほんと進んでもらっていい!?!?
『ガララララララ……』
はぁ……。はぁ……。や、やっと終わった……。
体育館の扉が閉まったから、中の客は全員外に出たみたいだ。
長かった!! もう、ほんと、どんだけ体育館に人いたんだよ!!
そんで。
「あっっっっついっ!!!!」
「あはは、俺も……」
人が密集して暑かったのと、声を張り上げてたから暑かったのとでもう汗だくだ。
向かい側に立つ妹尾先輩も、誘導を始める前より汗をかいている。確かに、ファンに囲まれてた分先輩の方が暑かったのかもしれない。
シャツも長いし。
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