10人が本棚に入れています
本棚に追加
もうやだ。これ絶対エアコンついてる校舎に入ってもしばらく暑いやつだし、汗を吸ったインナーが既に気持ち悪い。
スマホで時間を確認すると、12時57分。
これから部室に戻ってアレ取ってきて……。とかやってたら確実に引き継ぎの13時には間に合わないけど、ちょっとこの気持ち悪さは我慢できない。
それに引き継ぎ相手は宇部先輩だから、多少遅れる分にはそこまで怒られないよな。一応ちょっと遅れます。ってメッセージだけ送っとこ。
「妹尾先輩、ちょっと待っててください」
「? うん、いいよ」
先輩が匂い、嫌いじゃないといいけど。
「あ〜〜〜……。生き返る……」
「????」
あ〜〜〜、気持ちいー。やっぱ暑い時は首だな。うん。
普段部活終わりに使ってる制汗剤を部室から持ち出してきて、手に出してから首にかける。シートタイプを使う先輩とか同級生もいるけど、俺は断然液体派だ。だってシートじゃ物足りない。
匂いはド定番のせっけん。ボトルの色、ピンクは好きじゃないけど、匂いは好きだ。
首以外にも、腕やインナーの中にも塗っていく。たとえ吹く風がぬるくても、制汗剤をかけた首はひんやり冷たく感じて気持ちいい。
冷房の効いた校舎の中に入ったら、もっと冷たく感じるんだよな。快適、快適。
「……」
「あ、先輩も使います?」
妹尾先輩から視線を感じて見てみると、俺の事……。俺の持つボトルを凝視してた。使いたいのか? シート派じゃないといいけど。
「……前から気になってたんだけど、それ、何?」
「え」
何ってなに????
「…………もしかして使った事ない? んですか?」
「中学校の時クラスで使ってる同級生はいたけど、俺は使った事ないなぁ」
「マジっすか!?!?」
「え、うん」
ええええええ。マジか。こんな、超、有名制汗剤を、知らない?
「この制汗剤を知らない!? え、どういうものか、っていうのも!?」
「うん。……え、そんなに驚く?」
「まさか知らない人がいるとは思わなかったので……」
だってこんなん超有名商品じゃん!! それこそ、妹尾先輩みたいな爽やか系イケメンがCMやってますよ!!
「先輩みたいな人がCMやるようなやつです」
「どんなやつさ」
ちょっと笑って言うのもCMっぽい。なんかもう、文化祭と制汗剤っていうのが青春って感じが強くて凄い。このままCMにできそう。
「えーっと、つけると涼しくなる水? です!」
つけてみます? って差し出すと、先輩は恐る恐るといった感じで手を出してくれた。
「手首とか、風に当たる場所につけるといいですよ」
「! ほんとだ、なんか冷たく感じる!」
すごーい。って言いながら、先輩は腕を振って初めての制汗剤を満喫している。
……あ、そうだ。いい事思いついた。
楽しそうに腕を振っている先輩の後ろにまわって、自分の手に液体を出す。
それをバレないように、先輩の首に……!!
「!? 姉ヶ崎くん!?」
「めちゃくちゃ暑い時は首がオススメですよ!!」
「えっ? わっ!? な、なんか凄いスースーする!!」
そうなんですよね〜。首周りって、慣れてないとビックリするぐらいスースーするんですよね〜。
オレは好きだけど、初めてだとビックリしますよね〜。
「あ、あ、あ、すっごいスースーする」
ビックリして先輩が動くと、自然と首周りにも風というか、空気が流れるから更にスースーするんですよね〜。
イタズラが成功して、自分の顔が緩んでるのがわかる。おもしろ。
こう、いい反応をしてくれるともっとからかいたくなってくる!
最初のコメントを投稿しよう!