Boy Meets Boy

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 もうやだ。これ絶対エアコンついてる校舎に入ってもしばらく暑いやつだし、汗を吸ったインナーが既に気持ち悪い。  スマホで時間を確認すると、12時57分。  これから部室に戻ってアレ取ってきて……。とかやってたら確実に引き継ぎの13時には間に合わないけど、ちょっとこの気持ち悪さは我慢できない。  それに引き継ぎ相手は宇部先輩だから、多少遅れる分にはそこまで怒られないよな。一応ちょっと遅れます。ってメッセージだけ送っとこ。 「妹尾先輩、ちょっと待っててください」 「? うん、いいよ」  先輩が匂い、嫌いじゃないといいけど。 「あ〜〜〜……。生き返る……」 「????」  あ〜〜〜、気持ちいー。やっぱ暑い時は首だな。うん。  普段部活終わりに使ってる制汗剤を部室から持ち出してきて、手に出してから首にかける。シートタイプを使う先輩とか同級生もいるけど、俺は断然液体派だ。だってシートじゃ物足りない。  匂いはド定番のせっけん。ボトルの色、ピンクは好きじゃないけど、匂いは好きだ。  首以外にも、腕やインナーの中にも塗っていく。たとえ吹く風がぬるくても、制汗剤をかけた首はひんやり冷たく感じて気持ちいい。  冷房の効いた校舎の中に入ったら、もっと冷たく感じるんだよな。快適、快適。 「……」 「あ、先輩も使います?」  妹尾先輩から視線を感じて見てみると、俺の事……。俺の持つボトルを凝視してた。使いたいのか? シート派じゃないといいけど。 「……前から気になってたんだけど、それ、何?」 「え」  何ってなに???? 「…………もしかして使った事ない? んですか?」 「中学校の時クラスで使ってる同級生はいたけど、俺は使った事ないなぁ」 「マジっすか!?!?」 「え、うん」  ええええええ。マジか。こんな、超、有名制汗剤を、知らない? 「この制汗剤を知らない!? え、どういうものか、っていうのも!?」 「うん。……え、そんなに驚く?」 「まさか知らない人がいるとは思わなかったので……」  だってこんなん超有名商品じゃん!! それこそ、妹尾先輩みたいな爽やか系イケメンがCMやってますよ!! 「先輩みたいな人がCMやるようなやつです」 「どんなやつさ」  ちょっと笑って言うのもCMっぽい。なんかもう、文化祭と制汗剤っていうのが青春って感じが強くて凄い。このままCMにできそう。 「えーっと、つけると涼しくなる水? です!」  つけてみます? って差し出すと、先輩は恐る恐るといった感じで手を出してくれた。 「手首とか、風に当たる場所につけるといいですよ」 「! ほんとだ、なんか冷たく感じる!」  すごーい。って言いながら、先輩は腕を振って初めての制汗剤を満喫している。  ……あ、そうだ。いい事思いついた。  楽しそうに腕を振っている先輩の後ろにまわって、自分の手に液体を出す。  それをバレないように、先輩の首に……!! 「!? 姉ヶ崎くん!?」 「めちゃくちゃ暑い時は首がオススメですよ!!」 「えっ? わっ!? な、なんか凄いスースーする!!」  そうなんですよね〜。首周りって、慣れてないとビックリするぐらいスースーするんですよね〜。  オレは好きだけど、初めてだとビックリしますよね〜。 「あ、あ、あ、すっごいスースーする」  ビックリして先輩が動くと、自然と首周りにも風というか、空気が流れるから更にスースーするんですよね〜。  イタズラが成功して、自分の顔が緩んでるのがわかる。おもしろ。  こう、いい反応をしてくれるともっとからかいたくなってくる!  
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