恐竜あらわる(2)

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一回目の呼び出し音が鳴り終わる前に、大きな声が聞こえた。 「はい、フジワラ・シッター・サービスです」 「東川です。今、西岡さん宅にお邪魔しているのですが、ちょっと問題が起こりまして」 「お疲れ様。どうしたの?」 応答したのは、春菜の面接を担当した藤原という男だった。愛想は悪くないが、声が大きく、がさつな印象のある小太りの男だ。 「依頼者の方が、大人の男性の面倒を見ろって言うんです。何か勘違いされているのかと思って」 「ああ、そうだった。ちゃんと伝わってなかったのかな」 「え?」 相手も驚くことだろうと考えていた春菜にとって、藤原の落ち着いた声は予想外だった。そんな戸惑いをよそに、彼は淡々と話を続ける。 「幼児退行って知ってる? 赤ちゃん返りとも言うのかな。精神が子供に戻ってしまう病気。うちはそういう客の保育もしてるんだよ」 「どういうことですか。それじゃ介護じゃないですか。ベビーシッターって、子供の世話をする仕事ですよね?」 「たしかにベビーシッターは子供の世話をする仕事だけど、彼らも中身は子供だから同じことだよ」 「はあ?」 ふと自分が大きな声を出していることに気づいた。部屋の奥に目をやると、あの五十男がこちらに視線を向けている。春菜はその視線を避けるように、壁の方向に向き直った。 「どこが簡単な仕事なんですか。大人の世話をするなんて聞いてないですよ」
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