恐竜あらわる(2)

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「本来、お坊ちゃまのお世話は私の仕事だったんです。でも、私はこの家の家事全般を請け負っておりますので、つきっきりでお世話をするわけにはいきません。そこで、あなたのような方にお願いすることになりました。あなた来ていただければ、奥様も安心できます。もちろん、投げっぱなしというわけではありません。もし何かあれば、私に言っていただければ何でもサポートさせていただきます。けっして無理な仕事はお任せしませんので、いかがでしょう」 下げられた頭を見て、春菜は言い淀んだ。前職で蓄えた貯金を使い果たした今、二十万円はありがたい金額だ。服も買えるし、遊びにもいける。家計の足しにもなるだろう。そういえば、弟も、新しいスパイクが欲しいと言っていた。 「そんなにおっしゃるのなら……」 気づけば、春菜は手を差し出していた。家政婦は、より深く頭を下げた。
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