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「ご飯食べられましたか?」
面接の部屋にまた戻ると、11月なのに部屋の窓を少し開けた派遣さんが聞いてくれた。
「はい、サンドイッチを・・・」
そう答えてから、私は派遣さんの姿を凝視してしまう・・・。
だって・・・
だって・・・
「俺、今日は牛丼テイクアウトしちゃいました!!」
牛丼を食べていた。
派遣さんが牛丼を食べていた。
「少し食べます?
大盛りなのでいいですよ。」
細マッチョの良い筋肉なのがスーツを着ていても分かる派遣さん。
そんな派遣さんが牛丼を美味しそうに食べている・・・。
窓を少し開けていても牛丼の美味しそうな匂いが・・・。
その匂いに刺激をされ、口内には大量に唾液が分泌されていく。
「・・・つゆだくですか?」
「つゆだくですね。」
「少し・・・一口、いいですか?」
「いいですよ。」
派遣さんが面白そうな顔で笑いながら、隣に座った私に牛丼とお箸を渡してくれた。
派遣さんも使っていたお箸だしそれには一瞬だけ悩み・・・
でも、派遣さんの食べ掛けの牛丼を貰うわけなので、そんなことを気にしていたら食べられない。
米が食べたかった。
私は米が食べたかった。
そして、肉・・・。
米と肉が食べたかった・・・。
米と肉があれば他には何もいらない。
米と肉があれば満足出来る。
逆に、米と肉でなければ満足出来ない。
目の前の牛丼を、五感全てで見て・・・
五感全てで感じて・・・
派遣さんのお箸で、派遣さんの食べ掛けの牛丼を・・・
食べた・・・。
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