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エラの愛情たっぷりの朝食の後、屋根裏の扉を開けて、彼女は戦場へ向かう。敵ばかりの鉄柵と茨に囲まれたこの古めかしくてただ広いだけの屋敷にエラの最愛の父と母はもういない。いるのはエラに雑用ばかり押し付ける悪魔のような継母と姉たち二人だけだ。
エラのお父さんの趣味を疑うよ。僕だったらあんな下品な高笑いをするような女は御免だ。
僕は大急ぎで残っていたスープを飲み干して食卓を降りて床を走り皆で齧って開けた穴に潜り込む。するすると滑り台のように落ちていく先は一階の台所。穴の先からすぽんと落ちると、エラはいつものように忙しそうにフライパンと鍋の間を行ったり来たりして、三匹の悪魔たちの朝御飯を作っていた。
僕はエラに教えてもらった通り、ふきんを水に浸してから縦に持ってぎゅっと絞り、頭をそれに押しつけてテーブルの上を行ったり来たりして拭いた。
そしてエラが並べたお皿の左右にスプーンとフォークを並べる。それはエラが使っているのとは違って銀色で木目もなく重くて疲れるけれど、僕は誇らしい気持ちになるんだ。
この家でエラを守ってあげられるのは、僕しかいないって思いながらちょこまか働くのが楽しいんだ。ひょっとしたらこれがエラの言ってた“生きがい”ってやつなのかな。
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