恐竜に乗れた日

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 ゴミげんは、とにかく、喋る声も笑う声も、時々癪に障るくらいうるさいらしい。彼と同じクラスの友達から聞いた。  高校に入る前、どこか地方に住んでいたのか、喋り方が訛っていて発音の場所が独特だそうだ。  私は、ゴミげんと必要以上の会話をしたことがないから言葉のイントネーションの違いにはそこまで気が付かなかった。  ただ、彼の持ち物は色褪せていたり汚かったりすることが多い。上着とかもクシャクシャの紙みたいに皺だらけだったり、靴紐も時々外れていて、だらしのない人だな。とは思っていた。  けれど、一方で親の介護に献身的で、驚くくらいいいやつだ。という噂もあった。  実はお母さんがここへ入院する前から、私は近所で度々ゴミげん達を見かけていた。スーパーへ向かう途中で。ショッピングモールの店内で。おじさんの車椅子を押す高校生くらいの若い男の子がいるな。と気になっていた。  お父さんをいつも病院に連れてきているし、〝驚くほどいいやつ〟も、もしかするとそれは本当なのかもしれない。  そして、君たちはどうしてこんな事まで知っているんだよ。と、突っ込みたくなってしまうけど、彼の家はお母さんが出て行っていて、お父さんとゴミげんは生活保護を受けているらしい。  私がゴミげんに対して知っている情報はこれくらい。  親が同じ病院にお世話になっているし同じ学校だけれども、私は彼と交流を持つことを自然と避けていた。  
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