恐竜に乗れた日

54/66
前へ
/66ページ
次へ
 それから私は、病院の帰り、時々ゴミげんと馬場さんの謎の集まりに入れてもらった。勿論、夜の8時には帰るようにしていたし、ご飯を食べて帰るなら連絡もした。  お父さんとは仲直りしたわけじゃないけれど、リビングで会えば普通に会話もするし、一緒にご飯も食べる。どちらかが謝ったわけでもない。ただどちらもあの日に触れないまま、時間が経っただけ。  謎の集まりには時々おキョンや眼鏡くんも参加することがあって、そういう日は一層楽しかった。森君とテニス部の子の噂は、訊こう訊こうと思っている間にいつしかほとんど気にならないようになっていた。森君とは、テスト期間中は一度一緒に帰っただけで、そこからLINEしかしていない。文体もまたそっけない感じに戻ったし、態度も冷たいし、繰り返される気分次第の接し方に嫌気がさしたのか、なんだか彼への気持ちも冷めてきていた。  遊びながら勉強も家事もちゃんとこなした。お母さんの所へも行った。  そんな日常の中、最近一つ楽になったことがさる。それは、私が暴れたあの日から、仁志が以前よりも随分と手伝ってくれるようになった。主に洗い物はしてくれるし、重たい物を買う時は付いて来てくれる。お父さんは最初だけで、相変わらずだけど。  今日はテストも終わったし、ゴミげんたちとお好み焼きをする約束だった。いつもより気持ちお洒落をして、行き慣れたカビ臭い部屋へ向かう。  扉の前に立ち、インターフォンを鳴らそうとした時だった。  ゴミげんと車椅子に乗ったおじさんが現れた。おじさんに頭を下げる私を見てゴミげんは「今日はオトンも混ぜたって〜」と笑って言った。  「退院したの?」と訊く私に、首を振って外泊だと答えた。  おじさんは顔は腫れぼったいような感じだったけれど、全体的に痩せた気がした。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加