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馬場さんとお好み焼きの準備をしていると、おキョンが来た。その五分後に眼鏡君も来た。
「希菜!来る途中スーパーでマジヤバなジュース見付けたんだけど」
おキョンは柿ジュースと書かれたペットボトルを見せてきた。
「うわ、まずそう」とキャベツを片手に横目でそれを見ながら言った。
「うーん。なかなかパンチの効いた飲み物ですな。ま、ビタミンC摂取にはいいか」
足音も無く眼鏡君が入ってきてボソリとつぶやいた。キャベツを切りながら柿ってビタミン取れるんだ。と、思っていたら「柿ってビタミンC入ってんだ!」とおキョンが言ったから、勝手にシンクロを感じ、笑いそうになった。
私が切ったキャベツを馬場さんが生地に混ぜていく。おじさんを車椅子から家の座椅子に誘導したゴミげんは、「柿ジュース、気になるね」と言ってまた丸めたティッシュを使いホットプレートに垂らした油を伸ばした。
「ゴミ太、後で飲んで!」
茶化すようにおキョンに言われ、ゴミげんは「なんで俺やねん!」と変な発音のツッコミを入れていた。
「じゃあ薄眼鏡も道連れで」
「薄眼鏡になったんですか、赤木君のあだ名」
「まことに残念ですが、なったようですな」
お好み焼きの形を整えながら馬場さんは引き笑いで爆笑していて、眼鏡君は物静かな声でニマッと笑いながら、柿ジュースを持ち上げ、それを眺めていた。
「後で共に飲もう」
眼鏡君の肩にポンと、手を置き、頷きながらゴミげんが笑う。そのやり取りを見ていたおキョンが「いやいや後からじゃ逃げられるからー」とゴミげんが買って机に置いていた紙コップを二つずつ出し、ジュースを入れた。
すると、不味かったのか飲んだ二人は、「うーわ」と言って前屈みになる。
顔の中心に全てパーツが集まったみたいな複雑な表情に、吹き出しそうになった。
結局気になって、私やおキョン、馬場さんまで飲んでしまう。
ジュースの味は実に微妙だった。甘ったるくて柿独特の匂いが、自由すぎる。
そんな私達の様子を見て、おじさんはコーラを飲みながら微笑んで見ていた。
コーラ、飲んでいいのかな?そんなおせっかいな心配をしてはゴミげんがこの状況に気付くように合図を送った。
ゴミげんはチラッとおじさんのほうを見たけれど、何も言わずに、お好み焼きの隣で焼きそばを焼きながらみんなと笑っていた。
私も仲間に入れてもらい、わーきゃー言いながらすでに形の崩れたお好み焼きをひっくり返した。焼きそばの入ったお好み焼きを、その日初めて食べた。
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