恐竜に乗れた日

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 話終わって二人で家に入り、おじさんの様子を確認してから恐竜を触っていると、ゴミげんが言っていた通り、彼のお母さんが来た。私を見て微笑んではいたけれど、いい顔はしていなかった。お母さんは、背が高くて目元がゴミげんに似ていた。服装は、皺のないシャツとジーパンといったカジュアルな装いで、鞄だけブランド物。お父さんとはまったく違う、きちりとしていそうな感じの人だった。  お母さんは、ゴミげんにお父さんの体調を訊いて様子を見に行った後、時計を見ながら私を送って行くよう彼に言った。  私は素早く帰る準備をして玄関のほうへ向かった。リビングの扉が開いていて、半分目を開けているおじさんと視線が合った。私に手を振ってくれた。私は軽くお辞儀すると小さな声で、お邪魔しましたと言って家を出た。  空を見上げると、さっきよりも夜が深い気がした。夜風と苔の混ざった匂いがした。
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