文豪が泣く

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 彼の所属するサークルで文豪を演じる企画が募集された。世界中の文豪から一人選んで、その人となりを演じようという企画である。脚本は日本語で書いてよいが、外国の文豪を選んだ場合、外国公演も視野に入れておくようにとのことである。何年かかってもいいから納得できる企画にする必要がある。  いろいろ悩んだ末、彼はトルストイを選んだ。かの文豪が今の世の中を見た嘆きを表現してみたかったからである。  非暴力主義を含め、かの文豪から学ぶことは多い。  外国公演するとなるとロシア語の勉強が必要になる。ロシア語を母語とする人を感動させてこそ演じる意義がある。  自分の演技をきっかけにして世界中の人がロシア語で平和を語るようになれば、どんなに素晴らしいことだろう。  ロシア語で包み込んでしまうことになる。  そのような夢を実現させるために、しばらく封印していたロシア語を学び始めることにした。  またひとつ彼の外国語の窓が開かれていく。
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