6歳

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 その後、バーニーは一旦停止された。お父さんがアップグレードの操作をする間、悠は身じろぎもせずに待っていた。三十分ほど後にバーニーは再起動された。 「やあ、バーニーだよ」とバーニーは言った。「すっかり良くなって戻って来たよ。心配かけてごめんね」  お父さんとお母さんはにっこり笑って悠を見たが、悠の表情は凍りついたままだった。 「バーニーじゃないよ」と悠は言った。 「バーニーだよ?」とバーニーは言った。 「前の通りのバーニーよ」とお母さんも言った。 「どこから見てもバーニーだよ。どこも変わってないじゃないか」とお父さんも言ったが、悠は怒ったように見つめるばかりだった。 「バーニーじゃない」  お父さんはため息を吐いた。 「じゃあ、好きなようにしなさい。お父さんはもう行くからな。泣いてお母さんを困らせるんじゃないぞ」  お父さんの映像は消えた。お母さんは悠を抱き寄せ頭を撫でてやったが、変化がないのでやがて台所へ戻った。 「僕はバーニーだよ。遊ぼうよ」とバーニーは言った。「遊べば元のままのバーニーだって分かるよ」  悠はバーニーを睨みつけた。  その日の残り、悠はバーニーと申し訳程度に遊んだが、ずっとおざなりな態度だった。そしてその翌日以降、バーニーは滅多に起動されなくなった。
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