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そして、月曜日。
「おはようございます!」
爽やかな、筧さんの挨拶。
今日も肌つやがいい。それが、自分と会ったせいだと思うと顔がにやけてしまう。
そういえば、彼女の部屋にあったレベッカのぬいぐるみ、記念に写真撮っとけばよかったな、なんて。
またしても妄想、いや回想しようとしていると、とんとん、と肩を叩かれた。
「……なに」
「係長、何かいいことありましたね?」
谷川さんだ。にやにやしている。
「さてはうまくいったんですね、筧さんと」
「え?」
ぐふふ、と谷川さんは笑う。
「私のことをただ仕事ができる部下と思っちゃいけませんよ?」
「え、いや思っちゃいないけど……先週もミスしまくってたよね、君」
谷川さんはスルーして続ける。
「大体、係長はわかりやすすぎなんですよ。朝、筧さんが来てから仕事スイッチ入るじゃないですか」
「えっ」
「恋愛すると仕事できなくなる人ってのはよくいるけど、係長は逆パターンの珍しいタイプですね。
いやぁ、観察し甲斐があります!」
「君ねぇ……」と赤くなりつつも、説教モードに入ろうとした僕は気づいた。
周囲の机の社員たちが、肩をふるわせ……笑いをこらえている。
「……なんだ君たち」
「隠しきれていると思ってるのは係長だけですよ?」
「えっ」
あたふたする僕。
「係長、おめでとうございますぅ!」と谷川さんはにやにや笑う。
僕は耳まで赤くなった。
「いいから、早く準備しなさい、あと10分で商談に行くぞ!」
「はぁ~い」
「返事は、『はい!』」
「はい!」
谷川さんが急いで準備するその向こう、筧さんがくすくす笑いながら通り過ぎていった。
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