皆の裏の顔

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皆の裏の顔

「おはようございます!」 「おっ高田さん、今日も元気だね!」  休み明け、フロア入口で話す高田さんは今日も綺麗だ。  僕の視線に気づいて、にこっと微笑まれた。心臓が跳ね上がりそうになるのを抑えて、控えめな会釈を返す。  その日は、普段より筧さんに目がいってしまった。フロアを横切る時、外出する時、戻る時。  彼女がやたら腕や首を押さえているのに気づいた。  いけない妄想が膨らむ。昨夜、彼氏に触られたんじゃないだろうか。  つまりは、そういうことを。  ああ、いや、仕事しなさいよ僕。  雑念を追い払うべく、ぶっ(つづ)けで仕事していたら「係長、今日進捗早すぎませんか、タイピングの音えぐいんですけど」と谷川さんに言われてしまった。    あと3日、あと2日、あと1日……。  定時上がりでアニメ映画を観に行く時だってこんなにそわそわしないのに。  自制しようと、筧さんと彼氏とのキス場面を思い返す。それなのに、彼氏の姿がいつの間にか僕にすり替わって妄想が激しくなる。  「推し」なんて一線を引くための言い訳だ。  僕は筧さんに恋をしている。  自覚したのは、よりにもよって待ち合わせ場所に向かう道中だった。
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