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君の素顔
「あの、本当に偶然なんだけど前に公園でキスしてるの見ちゃって……」
「え?」
不審そうな声音に、ビクッとする。
「最近綺麗なのも、恋人がいるからかなって……」
「……」
今度こそ引かれた。終わった。
ああ、なんで僕の口はこんな時だけ滑らかになるんだ。
「すみません……」
しばらくして。
はぁー、と吐息が聞こえた。
「ほんっと、男の人って表面しか見てないんだから。
まぁ、見せないようにこっちは努力してるんですけど」
「筧……さん?」
なんだか年上の女性から説教されているような口調。筧さんの雰囲気までガラリと変わって、僕はあっけに取られていた。
彼女はワインをぐびぐび飲んで、グラスを置いた。
「この際だからはっきりさせましょ。
高田さん、毎朝私のこと見てるでしょ?」
「う……はい」
バレてた?
心臓の鼓動が急に速くなる。
「じゃあ、これも気づいてた?」
筧さんはハイネックの襟元を引っ張って、首の横を見せた。
白い肌が目に飛び込み、どきりとする。
「……え?」
てっきりキスマークでもあるかと思ったのに。
そこには、痛々しい青アザがあった。
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