第三話

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第三話

「……魔物ではない?」  ローブの人物が、こう口に出しながら首を傾げた。  その言葉の通り、目の前に居るのはどう見ても少女である。これにはその場に居た全員が頭を抱えた。 「失敗か……。次、行えるのはいつだ?」 「一週間後かと……」  リーダー格のローブが答えると、国王はがっくりと膝を落とした。  国王たちの落胆をよそに、召喚の陣から現れた少女はキョロキョロと周りを見回している。それも無理はない。突然見知らぬ場所に立っていたのだ。ここがどこだか気になって仕方ないのだ。 「あのー、すみません。ここってどこでしょうか?」 「しゃ、しゃべったー?!」  少女が口を開けば、ローブの人物が大声で驚いた。 「失礼ですね。喋れますよ、当たり前なのです」  少女はぷんすかと怒っている。  ところが、目の前の人物共は、誰一人として少女の質問に答えない。絶望に打ちひしがれ、膝をがくりと落としているばかりだ。 「何なんですか! 人を呼び出しておいて放置って、何様のつもりですかーっ! こんなだから、土地が痩せるんですよっ!!」  少女は叫びながら、ジタバタとしている。はしたない動きではあるが、目の前の連中の失礼さに比べれば可愛いものだ。それだというのに、まったく少女に見向きもしようとしないとは、失礼極まりない話である。  怒り狂う少女に、近くに居た王女たちが恐る恐る近付く。 「あの……、申し訳ございません。呼び出しておきながら、無視するような事になってしまって」  一国の王女が頭を下げる。しかし、少女の怒りは収まる事はない。 「今、土地が痩せていると仰りましたが、そのような事が分かるのですか?」  王女二人がそろって質問をぶつけると、ようやく少女の動きが止まった。 「分かるわよ。私は土の魔法が得意なんだから。というか、あなたたちは誰?」  不機嫌を惜しげもなく前面に出し、少女は王女たちに素性を尋ねた。 「これは失礼しました。私は、このハサル王国第一王女のアリアと申します」 「同じく、第二王女のカイネと申します。この度は不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」  二人の王女は名乗り終えると、少女に対して深々と頭を下げた。 「お父様たちはしばらくそっとしておくとしましょう」 「そうですね。あなたは私たちと一緒にこちらへ」 「えっ、ちょっと」  少女は二人の王女に手を引かれて、儀式の行われた部屋から出ていった。  部屋の中では、国王がいまだに膝をついて絶望に打ちひしがれていた。
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