31人が本棚に入れています
本棚に追加
第三話
「……魔物ではない?」
ローブの人物が、こう口に出しながら首を傾げた。
その言葉の通り、目の前に居るのはどう見ても少女である。これにはその場に居た全員が頭を抱えた。
「失敗か……。次、行えるのはいつだ?」
「一週間後かと……」
リーダー格のローブが答えると、国王はがっくりと膝を落とした。
国王たちの落胆をよそに、召喚の陣から現れた少女はキョロキョロと周りを見回している。それも無理はない。突然見知らぬ場所に立っていたのだ。ここがどこだか気になって仕方ないのだ。
「あのー、すみません。ここってどこでしょうか?」
「しゃ、しゃべったー?!」
少女が口を開けば、ローブの人物が大声で驚いた。
「失礼ですね。喋れますよ、当たり前なのです」
少女はぷんすかと怒っている。
ところが、目の前の人物共は、誰一人として少女の質問に答えない。絶望に打ちひしがれ、膝をがくりと落としているばかりだ。
「何なんですか! 人を呼び出しておいて放置って、何様のつもりですかーっ! こんなだから、土地が痩せるんですよっ!!」
少女は叫びながら、ジタバタとしている。はしたない動きではあるが、目の前の連中の失礼さに比べれば可愛いものだ。それだというのに、まったく少女に見向きもしようとしないとは、失礼極まりない話である。
怒り狂う少女に、近くに居た王女たちが恐る恐る近付く。
「あの……、申し訳ございません。呼び出しておきながら、無視するような事になってしまって」
一国の王女が頭を下げる。しかし、少女の怒りは収まる事はない。
「今、土地が痩せていると仰りましたが、そのような事が分かるのですか?」
王女二人がそろって質問をぶつけると、ようやく少女の動きが止まった。
「分かるわよ。私は土の魔法が得意なんだから。というか、あなたたちは誰?」
不機嫌を惜しげもなく前面に出し、少女は王女たちに素性を尋ねた。
「これは失礼しました。私は、このハサル王国第一王女のアリアと申します」
「同じく、第二王女のカイネと申します。この度は不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
二人の王女は名乗り終えると、少女に対して深々と頭を下げた。
「お父様たちはしばらくそっとしておくとしましょう」
「そうですね。あなたは私たちと一緒にこちらへ」
「えっ、ちょっと」
少女は二人の王女に手を引かれて、儀式の行われた部屋から出ていった。
部屋の中では、国王がいまだに膝をついて絶望に打ちひしがれていた。
最初のコメントを投稿しよう!