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針と物語
満たされた翌日の昼下がり
どこか遠くの宇宙で太陽が燃えて
その輝きが木々を揺らして
僕の針が世界の針と重なったことを知る
時はゆっくりと流れて僕を巻き込み
僕をたった一部として消化していく
針が重なる間中
僕は過去の自分を意識してしまう
ある時を境に他人が僕になり
その引き継いだ役割を担う
そのバトンを受け取るのは誰か分からない
死はそのバトンを誰かに渡し
また終わらないひとつの物語を描く
物語は死なない
僕に宿ってしまった彼らを殺す手段がなくて
僕はすっかり参ってしまう
いたずらに速く進む僕の針と
いたずらに遅く進む世界の針
世界の針は僕の貪欲をも刈り取って
穏やかに死まで運んでしまうだろう
自分の速度に気が付かせないまま
僕の針は着々と僕の神経を蝕み
平穏を許せない精神に作り変えてしまうだろう
自分の限界に気が付かせないまま
物語は進んでいく
針に合わせて回転を速め、遅める
適切な針を探すか
あるいは物語を殺すか
それ以外に選択肢はないように思える
僕にまつわる絶望はいつも側にある
自決は自決を意味しなかった
僕にとってそうだった
物語の終わりにたどり着くのは
死が僕を受け入れるのは
いつになるだろう
どちらが先だろう
針に合わせて
物語は進んでいく
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