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夜明け
羊の幽霊は朝に溶ける。
内側から溶かされて街に染み、
意味を与えて駆け巡る。
私の臆病は蝋。
溶かされることなく固まる。
火の灯るのを冷えて待つ。
螺旋階段は軋みを立て、
今しがた降った雨に歪む。
遊歩道には煙が揺れる。
流れゆく憂鬱は排水溝に沈む。
情緒も無に帰す朝の空気は、
火と成り得るか。
私の臆病は蝋。
溶かされることなく固まる。
火の灯るのを冷えて待つ。
扉を開ける空っ風。
私の臆病は蝋。
僅かばかりの灯りに溶かされ、
軋み、歪み、揺れ、沈む。
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