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本当にわけのわからないことが立て続けに起きている。でも、記憶が無いからには何もかもわけがわからないから、どうしようもないと割り切ることにした。
さて、この場所はどうやら大きな建物の中らしい。石造りで、窓がない広い部屋の中。窓がないとはいえ、とても明るい。そして目の前には、さっきの男が。
「本当にいきなりですまん。今から詳しく説明しよう。まず、俺の名はプルート。さっき俺達がいた城壁の内側にある都市国家、イニティウムの秘密結社『教会』の一員だ」
「で、ここがその教会ってとこなわけ?」
「お、察しが良くて助かる。ここは教会のど真ん中、集会所だな」
要するに、このプルートという奴は教会という場所にボクをどうしても迎え入れたかったというわけらしい。どうしてなのかは分からないけど。
こっちとしても、お世話してくれる場所ができるとか、そういう感じになるならありがたい。自分の家がどこなのかも分からないし、分かっても生活できるか不安だし。
「それで? ボクに何か用でも?」
「用が無くて誘導したり、こんなところに飛ばすわけないだろ。うちのトップ自らがお前のことをずーっと求めてたんだ。ほら、会いに行くぞ」
プルートはボクの腕を掴んで、右奥に見えた廊下の先へと歩きだした。掴む力はそれほど強くなく、優しくエスコートしてくれるという感じ。第一印象がなかなか悪かったけど、けっこういい人そう。
ただ、エスコートされるままに来た部屋がなかなか怪しげな雰囲気だったので、また不安になってきた。こちらに背を向けている椅子には、おそらく「トップ」がいるのだろう。
「オーナー、言われた通り連れて来たぞ」
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