10人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
ドンは土手の上を悠々と歩いた。
姿が見えなくても、電話越しに話すみたいに、相手がどんな態度で話しているのかは伝わってしまうものだ。
緑にふちどられた澄んだ川岸で、爽快な空気を深呼吸し、大きく伸びをする──ような演技をするうちに、自分もその気になっていく。
「あっ! あそこに花が咲いてる。ハイビスカスみたいな、花びらが白くて真ん中が少し赤いやつ。すごく綺麗だ」
ゴミの散乱した河川敷に、くたびれた花をかろうじて咲かせた茂みがあった。よどみにネズミの死骸が流れていく。夏草のあいだを飛びかうのは、蝶ではなく、コバエだ。
ドンはそれは無視した。
メグは穏やかにまぶたを閉じたまま、満足そうに、にっこりした。
まるで、カボチャを馬車に変え、ネズミを馬に変える、シンデレラの魔法使いだ。
なんという天真爛漫さだろう! あんなゴミ溜めにいながら、あの子はそれに気づいてないなんて!
最初のコメントを投稿しよう!