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さてもう、怒っていられない。
このままでは話ができないもの。
アキ君がそこまでいう家ってどんな家なのか気になり始めていた。
「見られるの?」
「え?あ、うん!小滝さんからメールで写真をたくさん送ってもらったんだ!ちょっと待ってて!」
嬉々としてノートPCを取りに行くアキ君。ブンブン振れるしっぽが見えた。
でももしダメなとこがあったら文句は言わせてもらう。私も住むわけだし。
日当たりとか、家事動線とか、そういうのをアキ君がちゃんと見ているとは思えない。
すぐにノートPCを抱えてやってきたアキ君は私にくっついて座った。
メールを開いて添付ファイルを開き私にPCを渡してくれた。
ファイルが次々再生される。
初めに出てきたのは外観。見るからに古そうな、いかにもな古民家。
でも…。
広い三和土の玄関、手の込んだ建具、囲炉裏まである…。
囲炉裏の煙に燻されたのか真っ黒で立派な梁の写真もあった。
建築物の知識はあまりないけどそれらが今はもう簡単には手に入らない貴重なものだとわかる。
陽が差し込む縁側。冬、日向ぼっこできそう…。
縁側からの景色は広い庭越しに青々した山林の風景。
すごい好きな雰囲気…。
だってまっくろくろすけが出てきそう。天井からドングリが落ちてきそう。
そこまで想像してから、隣からの熱視線に気づいた。
アキ君がキラキラした目で私を見ていた。
早く感想が聞きたい…そんな感じ。
どうしよう。褒めたくない。
どこまでも嫌な性格の私。
「まっくろくろすけが出そうだね。」
「でしょー!でね、こっちの後から増築された部屋は洋風な造りなんだよ。」
写真に映った部屋はレトロな洋室で広くはなさそうだけどアーチ型のドアや窓、壁には腰板があって壁紙とかで雰囲気が変わりそう。和洋折衷なデザインのシャンデリアもかわいい。
「かわいい…!」
「でしょ!でしょ!ふうちゃん絶っ対気にいると思った!」
思わず呟いてしまった私の反応に、飛び上がりそうなほど喜ぶアキ君。
しまった。気に入ったことがバレてしまった。
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