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色々言いたいことはあるけど、最早それを言う気にもなれずゴニョゴニョ言うアキ君の両方のほっぺをつねってやった。
「いぃぃいーー!」
ゴニョゴニョが絶叫に変わった。
私が手を離すと、涙目になって自分のほっぺの痛みをほぐすようにさすっていた。
本当に無計画で、猪突猛進で、子供みたいなアキ君。
でも、一番初めに好きになったのはそういうところだった。アキ君の行動や発想は自由で、だからこそ、あんな仕事ができるんだ。そして、こんな捻くれ者な私にも優しいんだ。
私はそんなアキ君が愛しくて堪らないんだ。
「それで許してあげるよ」の意味も込めてアキ君が尖らせている唇にチュッとキスした。
するとそれは予想外だったみたいで少し驚いた顔のアキ君。頬をさする手も止まってる。
私は急に恥ずかしくなってそっぽを向いた。
覗き込むような視線を感じる。
アキ君がふわっと笑ったのが視界の隅に見えて、体が抱き寄せられた。
「ふうちゃん…おこったり照れたり忙しいね。」
どの口が言うのか。
全部アキ君のせいでしょ!
横を向いた私の顔が暖かいアキ君の手に包まれてキスされた。
「ふうちゃんって怒った顔も綺麗だね。」
また、チュっとキスされる。
そーいうことを言えばいいと思って!
そんなアキ君のキスに翻弄されてしまいそうな自分にもムカつく!意地でも目を合わせない。
「照れてる顔はかわいい。」
私の気持ちなどお構いなしに、アキ君の顔がまた近づいてきて今度は深いキスになった。
…しまった。
さっきの私のキスがアキ君の“オスモード”のスイッチを押してしまったみたいだ。
キスが気持ちよくてつい受け入れてしまう。
グッと体重がかけられてズルズルとソファーに倒された。
顔、耳、首とキスの嵐。
いつもやわやわでダメダメなアキ君のくせに、オスモードのときは簡単に主導権を握られてしまう。
アキ君のキスは私の弱いところを知り尽くしていて感じてしまう。
キスがだんだん胸元に近づいた時、アキ君の髪を何気なく撫でるとまだ濡れていることを思い出した。
ついでに私の目も覚めた。流されるとこだった。
「髪、乾かして!」
ぐいっとアキ君を引き離すとそのまま立ち上がりアキ君を置いてリビングを離れた。
なんとなく、今日はさせたくない。そんな気持ち。
だって勝手に家の契約してたんだよ?見もしないで。
怒りながらも本当は私もしたいのに、アキ君とくっついていたいのに…。何でこんなにも捻くれているのかな私。
残されたアキ君のしょんぼりした顔は見なくても想像できた。
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