へそ曲がりのメアリー

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へそ曲がりのメアリー

 メアリーったら 本当にへそ曲がり  あなたのお庭の様子はどう?  銀の鈴や 貝殻や  女の子たちが並んでいるの  …全国のメアリーさんに、失礼ではないだろうか。いつも、思うのだけど。ちなみに、僕の姉の名前もメアリーだ。だった、と過去形で語るべきかな。彼女はすでに、この世を去ってしまったから。  順番に話そう。その前に、自己紹介が大変に遅れてしまったね。すまない。  初めまして、みなさんこんにちは。僕は、コリン・レノックスと申す者。14歳のイギリス人だよ。当時植民地であった、インドにて生を受けたのだけれど。官吏の父と、放蕩な母。そして、先程申し上げた双子の姉だね。当然の如く顔が似てはいるが、男女の姉弟のため瓜二つと言う程ではない。ちなみに、母親は女の双子であったのだそうで。まぁ、あまり詰め込んで説明しても理解が進まないよね。この辺りの設定は、またおいおいと。  仕事人間の父と、それとは対象に遊び惚ける母。それぞれに、放任されて育った。乳母のアーヤに甘やかされ、姉弟とも気難しく我儘な人間になった事は否めないかな。まぁ、仕方のない事ではないか。それに、すでに申し上げた通り姉を含めた皆は亡くなってしまったよ。  当時流行した、悪性のコロナ…。じゃなかった、コレラによってね。父も母も姉も、使用人たちも皆やられてしまった。悲しくなかったか?そりゃまぁ、悲しかったさ。この年で、天涯孤独になってしまったのだから。だけれど、あまりに突然の事すぎて驚きが勝っていたと言えようかな。  そこを父の同僚に発見され、ヨークシャーに住む伯父・クレイヴンの元に引き取られる事となった。  船旅の途中、ずっと上述のマザーグースが聞こえていた気がしたよ。かようにして不運な僕と姉が、なぜ他人から嘲られねばならぬのか理解に苦しむ。
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