サムシング・フォー

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サムシング・フォー

 なにかひとつ古いもの  なにかひとつ新しいもの  なにかひとつ借りたもの  なにかひとつ青いもの  そして靴の中には6ペンス銀貨を  重ね重ね6ペンス好きだね、マザーグース。  みなさんこんにちは。コリン・クレイヴンだよ。生憎と、のんびりご挨拶を差し上げている時間が今の僕にはない。何せ、屋敷からここまで馬を飛ばしてやって来たのだからね。  急ぎゆえ、鐙をつけず股で馬体を押さえつけての乗馬となった。まさか我が人生で、古代ローマ人の真似事をする機会があろうとはな。目的の馬車は、意外と早めに見つかったよ。あの野郎、荷台の片隅で縮こまって体育座りしてやがる。ドナドナの再現かね?似合わないんだよ、その図体でさぁ!  「邪魔するぞ!」  言って、馬車の前に回り込んだ。御者が大阪人なら、『邪魔するんやったら、帰ってー!』とでも返されている所だね。彼にも仕事があるのだろうが、ここは物語の山場なのだから諦めてご静観頂きたい。  「そこの荷台の奴!君に言いたい事が、三点ほどあるぞ。耳の穴をかっぽじって、よく聞きたまえ。まず一点。神の愛は、無量にして無限のものである。人の幸せについても、同様だ!勝手に、自分の定量とやらを知った気になるんじゃない」  「…あ」  「二点。自分の事を、おれ『なんか』と卑下するものではない!謙遜のつもりか?百年早いんだよ!『まずは自分自身を愛せ』みたいな事を、他ならぬ君の母上が言っていたのだろう?ならばその通りに、実行したまえ!そしたら、二度と僕の前でへりくだるな」  「…あ、あぁぁ」  「三点。僕は、君と言う人間がいてこその僕なんだよ。君がいなければ、他の人間の事も愛せない。自分自身の事も、愛せない…。どうか、僕の歩む人生においていつも君が傍にいて」  「…あ、あぁぁ。おれ。おれ、おれおれ」  「…君が、どうしたのだ」  「お・お・おれ…。おれだって、おれだって。本当は…生きたい!せっかくこの世に生を受けたのだから、幸せを噛みしめて生きていたい。そしてその人生に、いつもあなたが傍にいてほしい」  「…ディコン。それば、僕も同じだよ。永遠に君を愛し続けると、ここに誓う…」  二人とも、馬(と荷台)から降り立った。そうして、愛する二人は見つめ合って互いを抱き締め…。幸せなキスをして、終了!物語の結末に相応しい、ハッピーエンドだ!  御者のおっさんが、ちょっと( ゚д゚)ポカーンとした顔で見守っていたがね。まぁこれも仕事の一環だから、そうドン引きせずに僕らの幸せを祝福していたまえ。  以上が、僕にとっての物語。僕と言う人間の、死と再生の物語だよ。退屈はさせないつもりだったが、いかがかな?願わくは、これを読んだ方の心にも一輪の花が届きますように…。  それでは、いつかまた出会う日まで。さらばだ!  〜FIN〜
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