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桑の木の周りを回ろう
桑の木の周りを回ろう
桑の木の周りを 桑の木の周りを
桑の木の周りを回ろう 朝早くに
みなさん、おはよう。コリン・レノックスだよ。そして、今ではメアリー・レノックスと名乗らされている…。述べたとおり、女の子の格好をしてね。
どうして、このような事態になったか?…僕も、よくは知らない。詳しくは、家政婦長のミセス・メドロックにでも聞いてくれたまえ。
なぜだか、インドに渡った僕の母…伯父にとって義妹だね。彼女から生まれたのは、女の子一人と言う話になっていたそうだよ。当然ながら、一人で生き残ったのも女の子。なので、いつか伯父に面会が叶う日も女の子の姿をしていなければならない。完璧なる、女の子の作法を身につけて…。
いや、そのりくつはおかしいだろう。下賤の召使いどもの発想は、どうにも理解が及ばないな。まぁ、それはいい。重ねて、衣食住の心配がないだけ御の字ではあるし。
それに、実は女装をするのも初めてではない…。インドで過ごしていた間だが、姉と二人で孤独でね。ごっこ遊びとかで、姉のメアリーから何度も女の子の格好をさせられていた。女の子としての作法も、叩き込まれてね。姉は一度も、男の子の格好をした事はないと言うのに。女尊男卑だ…。今更ぼやいても、詮のない事だね。
同じ顔だが、正直僕の方が美しいと自負しているよ。機会があれば、是非みなさんにもお見せしたいと存じる。まぁ兎に角、女装で過ごす事も不愉快ながらそこまでの苦痛ではない。屋敷の人間からの、好奇の目にも慣れたよ。インドとは違い、召使いたちがペコペコとしないのは些か驚いたが。
「ムーアが嫌いですって?何にも無いことはねぇ。色んなものが生えて、いい匂いがします。春と夏ァ、きれいですよ」
このマーサも、雇い主と対等に話すメイドの一人。古い屋敷と思っていたが、従業員の意識は百年ほど時代を先取りしているようで何より。着替えを命じると、『一人で、服も着らんねぇのか!』と呆れられた。いやまぁ、(女の子の服を)一人で着たことはないですよ?まぁいい。彼女は、事情を聞いていないのかも知れぬし。使用人と言え、ご婦人の前で軽々と肌を晒すものではないかな。
する事もないので、屋敷を出て庭を歩いていると…。だだっ広いだけで、これまた荒涼とした庭ではあったがね。牧童と言うには、些か年を取った…園丁見習いかな?若い男の使用人と、目があった。見上げるほど背が高く、引き締まった肉体をしている。みすぼらしい格好をしているが、なかなかに見た目は悪くない男だ。
軽く会釈をすると、みるみる顔を赤く染め何も言わずにそそくさと去って行った。そうかそうか。つまり君は、そう言う奴(ホモ)だったんだな…。じゃなくて僕、女の子の格好をしているんだったか。しかし、これは…。
無味乾燥な屋敷生活の中、良い退屈しのぎを見つけてしまったのでは?なんてね。
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