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「十六時間ですか」
「はい。我々、資格研究会は学校での勉強時間をトータルすると、それだけ勉強します」
資格研究会。それは国家資格、民間資格などの資格習得を目指してひたすら勉強する団体。もし、一つでも資格を習得したら、学校から特典が出る。
「今、大体、何人くらい在籍しているのですか」
「三十人弱くらいですね」
「結構多いですね。それだけ勉強熱心な人がいると、何だか心強いです」
「でも、最初は十人もいなかったですよ」
「どうしてですか」
「やっぱり、学校終わりの勉強に難癖を示す人が多かったらしくて」
「それだったら、どうして、こんなに増えたのですか」
「新しい資格が生まれたからです。今から五年前に」
「そんなに凄い資格何ですか」
「何せ、年齢制限なく、受けられる国家資格ですからね」
通常、国家資格には何らかの縛りがある。
大卒でないといけなかったり、特殊なコースを受講しないと参加する資格がないモノもあったりする。
「それを取得したら、どんな恩恵を受けることが出来るのですか」
「後ろめたさを感じなくなります」
「え」
「年齢と共に生ずる後ろめたさを感じずに、堂々と生きることが出来るようになります」
「何か面白そうですね。今度の資格研究会さんの記事はその資格をメインに活動内容を掘り下げようと思います」
「ありがとうございます」
「では、早速なのですが、その例の資格についてテキストか何かあればお願いします」
「分かりました」
資格研究会の部長は席を立ち、部室の中央へと歩いて行った。そして、めちゃくちゃ厚いA四サイズの参考書を両手で抱えて持ってきた。
「随分、厚いですね」
「九五二ページあります」
「そんなにですか」
さぞかし、凄い資格なのだろうと新入記者は思った。
「では、早速、その資格の正体を教えてもらいますか」
「はい。我々、資格研究会が最も熱を入れているのはこの資格です」
研究会の部長は、参考書のタイトル欄を指した。
そこにはでかでかと『自宅警備員技能検定』と書かれていた。
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