自堕落な猫と白いマイホーム

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     恋にハマるとか、ごめんだ。  仕事の足を引っ張るから。  なんとなく入ったこの世界だが。  今の仕事が気に入っているので、問題を起こしてやめたりとかしたくない。  そんな風に、和香に、 「……なんとなくなんだ」 と苦笑いされそうなことを思いながら、朝、羽積は身支度を整えていた。  今日の自分は、コピー機の会社で営業をやっている、感じのいい羽積だ。  スーツを着て、にこ、と鏡に向かい、微笑みかけてみる。  ゴミを手に下に下りると、同じアパートの主婦の人に出会った。 「おはようございます」 と頭を下げると、 「おはようございます、羽積さん。  普通にお勤めするようになられたんですね。  バンドはやめちゃったんですか?」 と言われた。  ……いや、バンドをやっているという設定ではなかったのだが、と思いながらも、 「はい」 と言う。
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