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「うん、聞いてるよ」 「それがね、うちのクロちゃん、お父さんの相棒の。もう十三歳の高齢猫よ。お父さんの歯が抜けた翌朝、クロちゃんが突然起きあがってね、口からぽろっと吐きだしたの。リビングの床がカランって。あら何だろって見たら、固くて茶色の固まりなの。お父さんの歯とそっくりでね。猫も歯槽膿漏になるのねえ。ふたりして、ぽろって。おかしいでしょう。そういえば最近、口が臭い気してたのよ。お母さん、クロちゃんがあくびしそうになったら息止めてたから。それでも臭ったわよ」  チーン、とトースターの音が鳴る。こんがりと焼いた食パンに、はちみつをたっぷりと塗った。 「あ、行かなくちゃ。ごめん、切るね」 「あ、はいはい。忙しい朝にごめんね。のどの骨、とれるといいわね。じゃあね」
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