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かなり長期での遠征になる。いつ帰れるかもわからない環境であっても自分の仕事がこなせるメンタリティも必要不可欠だ。
そうして選び抜かれた百人が、この超大型宇宙船に乗ることになるのだった。今回はそのメンバー発表の記者会見というわけである。
とはいえ、百人ものメンバーをずらーっと会場に並べるのは現実的ではない。今日ここにいるのは、宇宙船に乗ることになったメンバーの中のたった十五人だけだった。
――十五人だけなのに、何で僕がここにいるんだ……。
運動神経には自信があるし、元自衛隊でならした戦闘技術は折り紙つきである。だからこそ選ばれたのだということはわかっているが、いや、この記者会見にいるのは何も僕じゃなくても――と思わなくはないのだ。
緊張しているうちに、会見はどんどん進んでいってしまう。
「宇宙船内に積み込む食糧ですが、相当な量になっていますよね?百人の分の携帯食料がそのまた十年分以上あるとのことですが……そこまで長期での遠征になることも見越しているということでしょうか?」
「そうなりますね、ただ、船内でも特殊な装置と料理人の手によってさらに食糧は生産され続けることにはなります。あくまで念には念を、というところです。予定通りのコースで行けば、帰還は一年から二年後になりますから」
「今回の超大型宇宙船計画、一部の先進国だけで進めたことに反発もあったようですが……」
「仰る通りです。ただ、宇宙船を製造する技術に関しては、どうしても詳しい国とそうではない国がありますから。多くのエンジン技術などに関してもです。我が国と、イギリスにロシア、日本、中国、ドイツ……多くの国の叡智を結集しなければ、今回のプロジェクトはなしえなかった。そして、そのために伝統的な知識を貸してくださったそのほかの国の皆さんにも、我々は非常に感謝しているのです」
リーダーはアメリカ人男性のニックだ。金髪に音字色の髭、青い目をキラキラと輝かせた彼は今すぐにでも宇宙に旅立ちたいという顔をしている。本当ならこの記者会見でさえ時間の無駄だと思っていそうなのに、よくぞ笑顔で上手に質問を捌いていけるものだ。
感心していると、ついに恐れていたことが起きてしまった。記者の女性が、僕の方に視線を投げたのである。
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