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 リビングのテレビに二世芸能人が映っていた。 「小学校六年生でお年玉は十万円でしたよ。今? 実は今もお年玉もらってます。金額? それを言ったら税務署が来ますよ!」  母親が有名な俳優の二世タレントの言葉にスタジオは大爆笑。 「大学に入ったときには新築マンションを買ってもらいました。合格祝いですよ。悪い虫がつかないようにって」  大ヒット曲を持つ演歌歌手の二世歌手の言葉に、どよめきの声が上がるスタジオ。二世歌手も新アルバムを売り出しているところだ。 「芸能人の子どもって、人生ラクでいいよな」  大学生の将生は思わずつぶやく。リビングで一緒にテレビを眺める父親は、そんな将生の言葉に苦い顔。 「うちのオヤジも売れっ子俳優だったら、おれは今ごろ金持ちの息子だし、ああやってテレビに出てラクに大金を稼げるんだけどな」  将生はため息をつく。そんな将生に父親が苦い顔のまま言った。 「俳優って言っても簡単に大金を稼げるわけじゃないさ。売れる人なんてひとつかみ。いや、ほんのひとつまみの数しかいないしさ」  父親は将生にそう諭す。一緒にテレビを観ていた母親もうなずく。 「でも、オヤジだって昔は俳優だったんだろ?」 「そうだよ。ちょっとだけ映画に出たり」  そんな父親の言葉に母親が突っ込む。 「二時間の映画に出番は二回で、セリフも一回だけみたいなね」 「映画だけじゃない。テレビドラマにも出たり」と父親が言った。 「殺された死体の役でね。もちろんセリフはなし」とすかさず母親。 「それにコマーシャルだってやったぞ」と父親。 「新車の後ろを通りかかるだけの通行人の役」と母親。 「それだけじゃない。旅行キャンペーンのやつとか」と父親。 「新幹線の乗客、いちばん奥の席で頭だけ映って」と母親。
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