ピー助!

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そのマリカって女の子は、コージのファンらしくて、爪にキラキラ光るラメがついてた。 オレに「かわいー」って言って、なでてくれたから、かわい­くていい子だなって思ったんだよ。 でもそのあと奥の部屋で、二人はイチャイチャしはじめたんだ。 ノリコさんがいるのに、なにしてんだよ、コージ! オレがケージの金網をつかんで、ガシャガシャ暴れると、マリカに「その鳥うるさい! 気になるんだけど」と言われて、コージにケージごとベランダに追いだされた。 部屋に戻されたときには、マリカはいなくなってて、ノリコさんが帰ってきても、何事もなかったみたいだった。 コージはめずらしく、キムチ鍋なんて作ってやがった。 コージが風呂に入って、ノリコさんと二人きりになっているあいだ、オレはなんとか伝えようとして、考えに考えた。 『マリカ! その鳥うるさい! マリカ!』 「え……?」 ノリコさんは驚いて、しばらくオレを見て考えこんだあと、コージがいる風呂場に入っていった。 やった! 気づいてくれたんだ。 けど、ノリコさんは直接コージには言わないで、脱衣所からスマホだけ持って戻ってきた。 ソファーに座ってしばらくスマホをいじったあと、風呂あがりのコージがタオルで濡れた頭をかきながら戻ってきた。 「マリカって誰?」怖い声だった。 「えっ……ちょっと、なんで人のスマホ勝手に見てんだよ⁉︎ ……バンド関係の人だよ。そーいうんじゃないって」 嘘つきめ! 『マリカ!』オレがもう一度言うと、コージがものすごい形相でにらんできて、怖くなってもうそれ以上なにも言えなかった。 「お風呂場までスマホ持っていくなんて、おかしいでしょ⁉︎」 それから二人は大ゲンカして、コージは出ていって、ノリコさんは一人残って、長いあいだ泣いていた。 こんなときは、どんなこと言ったらいいんだろう? ノリコさん…… 『愛してるよ』と言ってみた。 でも、コージが前に言っていたのを思い出して言ったから、コージみたいな声で、ノリコさんはよけい大泣きしてしまった──大失敗だ。 今日はカモミールティー、飲まないのかな?  でも、なんだかそれでころじゃないみたい……。
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