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それから二日後、ノリコさんが仕事に行って家にいないすきに、コージが合鍵を使って入ってきた。
ノリコさんと顔をあわせないように、自分の荷物をもちだすつもりらしい。
ダンボールに、服とか歯ブラシまでどんどん入れていく。
プレステも持っていくんだな。
荷物をまとめ終わると、コージが、ギロッとこっちを見た。
オレは怯んだ。──やる気か?
でもコージは、オレの大好物のイチゴを取りだして、ケージを開け、オレを左腕にとまらせて、そいつを食べさせてくれた。
「おまえとも、これでお別れか」
なんだ、別れを惜しんでるだけか。嫌な奴だと思ってたけど、いいところもあるじゃないか。
オレを腕にのせたまま、ベランダに出て、外の空気にあたらせてくれる。
風が気持ちいい。やっぱり、青空って、見てるとウズウズするよな!
このとき、コージがニヤニヤしていたのが、ただの愛情だけではないと、どうして気づけなかったのだろう。
コージは、思いきり勢いをつけて、左腕を振りおろした。
オレは反射的に、飛んだ。
空高く舞いあがった! 風が気持ちいいっ!
鳥に生まれてよかった! ──ってなにするんだよ⁉︎
すかさず、コージはものすごい速さで家に入って、窓をピシャリと閉めた。
それじゃ家に入れないじゃないか!
オレは戻ろうとして、ガラスにむかって飛んだが、頭を打ちつけるだけだ。
サイコパスめ! こいつ、やっぱりサイテーだ!
こうなったら、ノリコさんが帰ってくるまで、ここで待ってやる。
そう、思ったのだけれど、しばらくしてトンボがそばを飛んできて、オレの気を引いた。
オレはひさしぶりに羽をのばして、そいつを追いかけるのに夢中になり、飽きたときには、家から遠く離れてしまっていた。
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