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ミユキちゃんの家は、小さな一戸建てで、お姉ちゃんと、犬のマイキーと、お母さんとお父さんの五人で暮らしてる。
ミユキちゃんは小学二年生で、マキ姉ちゃんは、クールな中学一年生だ。
みんな鳥と暮らしたことがないから、帰りにホームセンターによって、ケージからエサまで必要なものを全部そろえてくれた。
子供たちは大喜びだ。
「でも、ずうっと飼うわけじゃないよ。これって迷い鳥でしょ? もとは誰かが飼ってた高い鳥だよ。捨てられたんじゃなきゃ、探してるよねえ」
と、お母さんが言った。
捨てられたなんて、めっそうもない!
仕事から帰ってきたお父さんが、「前テレビで見たけど、こういう鳥って、もしかしたら自分の往所言えたりするんじゃない? それで飼い主が見つかったって話聞いたことがあるよ」と言い、「おーい」と話しかけてきた。
オレが『おーい』と返すと、おっさんは大喜びした。
オレのケージは、家族みんなが集まる、テレビのあるリビングにおかれた。
ものがいっぱいあってごちゃごちゃしてるけど、けっこう広くていい部屋だ。マイキーのトイレがべつの部屋だったら、もっといいんだけどな。
「なら話して聞き出しといて」とお母さん。「とりあえず、迷い鳥の貼り紙つくったから、明日近所のスーパーの掲示板に貼ってくる」
お母さんはオレの写真を何枚もコピーした紙束を、テーブルでトントンとそろえながら言った。
マキ姉ちゃんは、ソファーで寝っ転がってスマホをいじりながら、
「ねえ、検索したら、この鳥買ったら三十万円もするんだって! 遺失物って、三ヵ月たったら、拾った人のものになるんでしょ?」と言う。
ミユキちゃんは、真新しいケージごしに、しゃがみこんで目線をあわせた。
「おうち、見つかるから、安心してね」それから唇を近づけてヒソヒソ声で、「見つからなかったら、ずっとここにいてもいいからね」とささやく。
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