ピー助!

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とりあえず呼び名があったほうがいいということで、オレは〝ヨッシー〟と呼ばれることになった。 この家は人が多くて、すごくにぎやかだ。むしろ、うる­さい。 いつも誰かと誰かが話してるし、ほかの家族がいないときは、お母さんが大音量で映画配信を観てる。 犬のマイキーはエサを待ってるあいだじゅうほえるし、人が帰ってくるとほえるし、宅配が来てもほえる。 ミユキちゃんは、お風呂あがりに裸でバスタオルをマントみたいに引っかけて、ドタバタ走りまわった。 そうやって、一緒に風呂に入っていた人がパジャマを着てでてくる前に、家のなかのどこかに隠れるのだ。 「ミユキー」 パジャマ姿のマキ姉ちゃんが、イライラしながら脱­衣所からでてきた。手にはミユキちゃんの下着とパジャマを持ってる。 「自分でちゃんと着てよ! 濡れてるし。足あとついてるし、カゼひくよ」 水滴をたどって、お布団のある寝室のすみの、たくさん洋服のかかったハンガーラックの陰をのぞくと、ミユキちゃんが「わっ」と飛びだした。 「大丈夫だよ」それから、タオルをバサバサさせて、自分で自分を抱きしめるような変な仕草をし、 「あったかいんだからぁ〜♪」と歌いながらくねくねした。 「そんなんどこで見たの?」 お姉ちゃんが冷めた目でツッコむと、最近ユーチューブで見たお笑い芸人のマネで、今お気に入りだという。 ミユキちゃんは何度も何度も「あったかいんだからぁ〜♪」をくりかえした。 何日かして、ミユキちゃんがリビングのテーブルで宿題をしていると、キヨミばあちゃんとよく一緒に見ていた通販番組がはじまった。 あの男の声だ! これ好きなんだよね!
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