序章・無名

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その日の晩、また夢を見た。一人、大地の泉に立ち、イニティとの会話が始まる。 「フォルト、今日は早く起きてくれて嬉しいわ。…その、ワタシのお願いは…世界を救うことよ。 この世界は今、ワタシ達魔族と人間が戦っているわね。もしもその戦いが続くのなら、どちらにも破滅しかないのは解るわよね?それを止めて欲しいの。 貴方の剣技を見込んでのコトよ。ワタシもサポートするし、貴方なら絶対大丈夫だよ。 魔法が使えるでしょう?」 「な、何故、それを…」 魔法というものは大気中にある「マナ」を使い「魔力」として発動するというもの。 人間には魔法もマナも知ってる人は居らずオレが魔法を使える事は、オレ以外知らない。 そう、亡くなった両親でさえ…。 なのに… 「風の魔法と、火の魔法、それと水、か…ワタシにはその人の使える魔法がわかるのよ。3属性使える子は初めましてなのだけれど。」 「そ、そっか、そういう事ならその願い引き受けようかな」 「本当…?ありがとう」 「あぁ、これから宜しく、イニティ!」 これはあくまでも夢、そう思っていたから軽く引き受けられた…これはオレの幻想だと思っていたから… 「よぉ、元気そうだな!フォルトの剣舞、国民に魅せてやれ!」 フォレスト大佐の意気込みもあり、その日の剣舞は成功、筋が良いと言われたから始めた暇つぶしだったはずなのにこれほど楽しくなっていたこと、フォレスト大佐には感謝だな…これからも憧れ尊敬するたった1人の師匠だ…まぁ、上司でもあるんだが…。 「フォルトの剣舞はやっぱり綺麗だな。元々剣技の筋が良いし、姿勢が良いからより整って見えるよ。…さて今日からフォルト、キミも任務に着くんだろう? これは戦争、遊びじゃ無い…命はたった一つだけだ。それを大切にして頑張るんだ。たまには勝つ為の逃げだって必要だ。それを1番に言っておこう。さぁ、頑張って行ってきなさい。」 元々行くアテもなかったオレに、この場、『ワルキューレ・レゾナンス王国』の騎士寮へ連れてきて剣を持たせてくれた。 わけもわからない家出少年をここまで育ててくれた、そんな恩もあるわけだ。 どこまでも着いていくつもりである。 彼の、フォレスト大佐の剣技はは男のオレが見ても惚れ惚れするようなモノだ。 力強く、それでいて優雅。戦時の敵を狩るその姿は…とてもキレイでどこか悲しげだった。 そんなフォレスト大佐は前戦へ出る事が多々ある。いや、寧ろ前にいる所しか見ないんじゃないか?
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