終わって始まる

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勝手に日本人だと思っていたけど、違うかも。 見た目=国籍というわけではない。目の前の人は二度たまたま接する機会があっただけで、何も知らない。今までそんな人とふたりっきりで食事することは経験がなかった。 内気な私がお礼とはいえ……自分でもびっくりする。 普段なら声すら掛けられないのに、衝動的に呼び止めていた。 「あ、あの、失礼ですが、お名前をお聞きしても?」 食事を待つ間、手持ち無沙汰になる時間で訊いてみる。 同じテーブルで食事をするのだから名前くらいなら失礼ではないだろう。 彼は腕を組んで一度目を上へと向ける。 「あー……ケイっていうんだ。そっちは?」 「美波です」 ケイか。 シンプルだけど、彼に合っている気がする。 顔つきは清廉としていて綺麗だけど、シャツから覗く腕の筋肉とか節ばった手とかの男性的な部分が目に入るたびギャップでドギマギしてしまう。 「ハワイ島には観光?」 先にドリンクが運ばれてきて、コーヒーに唇を寄せてケイが訊いてくる。
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