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「あの‥‥お客様からご予約をいただいた時に、お客様がお訪ねになった、この裏にある池――めずらしい魚が釣れる池のこと。ずっと進入禁止になっていた、その池のこと」
フロントに現れたオーナーの女性は言った。
「えー、覚えてますよ。めずらしい魚が釣れる池が在るが‥‥今は入れないと‥‥」
僕は『宿泊申込書』を書き終えてから答えた。
「はい、そうだったんですが、その後、解禁になりまして、今は入れます」
「へー、それは嬉しいですね」
「なので、行ってみます?」
「その‥‥どう、めずらしいんですか?」
「ウロコが虹色に光るんです」
「ほぅ‥‥。それは、めずらしいですね‥‥」
「で、もし今日、特にご予定が無いようでしたら、行ってみませんか?」
「あー、その池にですか。いいですよ」
「じゃ、昼食の後に、ご案内しますので」
「それは楽しみですね。ちなみに、ここの名前の『ウィッチュ』の意味は?」
すると彼女は僕の耳元で、
「〝魔女〞です。では、お部屋にご案内します」
彼女は、カウンターから出てくると、僕のバッグを持った。
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