昨晩

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 昨晩。あんなに愛し合っていたのに。愛し合っていたはずなのに。  カーテンの隙間から差し込んだ日差しで目を覚ました私は、生まれたままの姿だった。性器の違和感が昨日の熱い夜を思い出させる。淫らにうねり、快感のままに喘いだ自身の姿が二日酔いのように蘇った。私は感じるばかりで、記憶の中の視界は朦朧としているけれど、あなたの名前を確かに呼んだわ。何度も何度も、大股を広げながら背中に腕を回して、呼んだわ。あなたも私の名前を呼びながら奥を突いてくれていたはずなのに、どうして私は今ひとりなのかしら。  ああ、この人に染められていくのだわ。そう思いましたのに、インクだけ零して知らんぷり。男なんて結局そういう生き物。呆れさせて、失望させて、女をいやらしい生き物に変えるだけ。そう気付きましても、屈辱や後悔はないの。こうやって女の道を知ってゆくのです、私たち女は。寂しくて寂しくてお股が疼くのなら、かつての男のせいにしてしまえばいい。私をいやらしく変えたのは、女の魅力を剥いたのはお前のせいだ、と好きなだけ己を慰めればいい。擦り、濡らし、穴を塞ぎ、女の声を上げればいいのよ。羞恥だと思うことこそ羞恥なのですから。  あなたを捨てた男を見てごらんなさい。もう頭も何も真っ白よ。お下品な獣は、あなたのような美しい女性に釣り合わないわ、彼が可哀想。  涙も記憶も、お下品に変えてしまっては女も獣。私は女を生きていたのよ、と過去の私を優しく撫でて。そうすれば、涙も愛液も甘い蜜となって変わっていくのよ、メスの蜂に。  されど、ひとり。今この瞬間を虚しい女と見られぬため、日差しの向こうを見つめた。シャワーを浴びましょうか。昨晩の、膜が張ったような肌を洗い流したいわ。そしたらまたカーテンを開け切って、この裸に全身で光を浴びるのよ。  書き間違えた用紙を捨てるのではありません。例えるならば、もう一枚新しい白紙を重ねて、糧を重ねたようなもの。  女が言う「いい女」とは、男のそれとは違う。私が憧れる女像はまるで形を成していないけれど、その女像が「あの頃の私だった」なんて腐っても言いたくないから、私は、空を視界に入れて立つの。おっぱいの先を凛と尖らせ、腰を反らせてお尻を膨らませる。 「勘違いしないで、昨晩の顔だけで勝ち誇ったように振舞っているのでしょうけど、もう過去になったあなたのペニスも忘れたわ。私は次に行くの」  朝日を味方にした私は、昨晩の黒い下着を洗濯機に放り投げ、新しい下着で私の宝を覆うの。自然光は裸を美しく魅せてくれる。
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