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1. 割のいいバイト
「悠斗先生、ごめんなさいね。慶太ったら、今日も出て来られなくて……お夕飯作りましたから、どうぞ召し上がってくださいね」
「いつもすみません……」
その夜も僕は家庭教師をしている若林家で、授業もせずに夕飯をご馳走になった。
実は、これがもう３ヶ月も続いている。
慶太くんは小学五年生。この若林家の長男だ。家には、父親の慶一さんと母親の紘子さん、そして慶太くんの姉で高校二年生になる茜ちゃんがいる。
『住みたい街ランキング』の上位に毎年名を連ねる人気の駅から徒歩5分の住宅街の、瀟洒な家に彼らは住んでいた。父親の慶一さんは大手商社勤務で、奥さんの紘子さんは専業主婦、名門女子校に通う姉もいて、絵に描いたような幸せな家庭に見えた。
僕は週二回、火曜日と金曜日の夜、慶太くんの勉強を見るために個人的に雇われた家庭教師だ。
大学三年生になり、これからゼミや卒論、そして就活と忙しくなるので、もっと割のいいバイトはないかと思っていたときに、大学生協の掲示板に貼られたばかりの求人票を見つけた。
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