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 時は現代。二〇XX年。  満開の桜並木から、薄紅色をした花びらが、ハラハラと舞い落ちる。  春の陽気は少し汗ばむほどに温かく、穏やかな日だった。  町の市街地にある教会で、パイプオルガンから奏でられる結婚行進曲が、祝福のメロディを弾ませていた。  この歳に二十六歳となった新郎、弐下部(にかべ)(しん)は、この日をどれほど楽しみにしていたことか。  彼女の為なら、命も欲しくないと思っているほどゾッコンだった。  一方、新婦、(みなもと)杏華(きょうか)は二つ年下。  町ですれ違えば、老若男女誰しも一度は振り向くほど美しい容姿の女性だった。  二人は今日、結婚した。  
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