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『このときの作者の心情を答えなさい』
俺はこの問題が大嫌いだった。この問題のせいで国語が苦手になったほどだ。
ここまで理不尽な問いがあるだろうか。なんせ正解がないのだ。
誰か作者に取材でも行ったのか。それとも国語のテストを作る人間には他人の心を読める能力があるのだろうか。でなければ作者の心情なんてわかるはずがない。
正解なんて誰にもわからないのだ。しかしそこに答えがあるというなら、それはテストを作った個人の妄想から生まれたものに過ぎない。
つまりこの問題は『テスト作成者の想像したこのときの作者の心情を答えなさい』と書くべきだ。いや、もしもテストにそう書かれていたとしても俺はこの問題を好きにはなれなかっただろうけど。
──しかし、今。
俺は人間に心を読む力がなくてよかったと思っている。
あの問題が想像力によって作られていたことに心から感謝した。
もしそんなことができたなら、きっと暴かれていただろうから。
「犯人はあなたです!」
名探偵は華麗な推理を披露して、俺の隣に立っている女を指差した。
指を差された彼女は「ちがう私じゃない」と必死に否定する。
先程まで容疑者だった周囲の人間は「まさか彼女が……!」と驚きの表情を見せる。
真犯人の俺も、周りに合わせて「ええっ⁉」と目を見開いた。
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