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暗い廊下を歩き始めて暫くすると、まるで巨大な吹き抜けのような、高い天井のある広間に辿り着く。礼拝堂を彷彿させるその上階部分には細い廊下があり、窓からは薄らと月明かりが射し込んでいた。
広間の奥にはダイアンシスの姿があり、背中を見せた彼は俯き加減に何か祈りを捧げているようであったが、靴底と石畳の擦れる音に反応し顔を上げた。
「ダリアか」
こちらに気づいた彼はゆっくり振り返り、真紅の双眸を向ける。先日ダリアによって受けた肩の傷は、すっかり癒えているようだ。
「ダイアンシス……お前、ロベリアと力の契約をしたのだな?」
ダイアンシスはご名答とばかりに目を細め、口の端をつり上げ笑う。
「なぜ……」
なぜそのようなことをしたのか――ダリアが足を踏み出しその真意を問おうとした時、背後から風が吹き抜け、何かが視界の端を掠める。
「きゃっ――!」
突然背後へ引っ張られる感覚にアイリスは声を上げるも、一瞬にしてダリア達から離されてしまう。
「アイリス!?」
ダイアンシスとの会話に気を取られていた為に僅かに反応が遅れ、振り返った時には既に遅く、アイリスは何者かによって連れ去られてしまった。
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